ルネ・ラルー監督が贈る、ステファン・ウルのSF小説『オム族がいっぱい』を基にした長編アニメーション。
こちらの記事では
映画『ファンタスティック・プラネット』の
- 映画の考察&解説
- 似ている作品
について映画ファンの方に答えていただきました。
※映画本編の内容に言及しておりますので、未視聴の方はお気を付けください。
ぜひ『ファンタスティック・プラネット』と一緒にチェックしてみて下さいね。
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目次
『ファンタスティック・プラネット』映画を通して伝えたいこととは?
映画『ファンタスティック・プラネット』が本編を通して伝えたかったこととはなんだったのか、映画を鑑賞した方に考察していただきました。
主題は人の歴史そのもの/自分とは違う存在への行動原理が描かれている
ココがポイント
トラウマ級と友人から勧められ、怖いもの見たさで鑑賞しました。
虫のように扱われていた人間が力を得ることで虐殺していた相手と和平を結ぶまでの過程に、チェコや周辺諸国の歴史観が感じられ、主題は人の歴史そのものであり自分とは違う存在への行動原理が描かれている気がします。
人類が争いを起こす要因で最も大きいものは、自分と他者の違いを認められないことです。
認められない他者に対して排斥し、反発した相手の力に脅威し、別離を選択する。
結局のところ、隣人として尊重できないなら、距離をとるのが一番の方法だと伝えたいのだと思います。
(30代女性)
人間が絶対的に知性や、感情、支配欲の王者ではない
ココがポイント
「人間が絶対的に知性や、感情、支配欲の王者ではない」ということを思いっきり投げかけてくる、そんな映画です。
現代の地球とは似て非なる世界観は、まるで私たちの地球がこんな環境であってもおかしくはないと思わせられます。
もし、恐竜が絶滅していなかったなら…、人間以外の生物が進化を遂げていたなら…、惑星イガムのような世界になっていたかもしれません。
急速に普及するAI技術すら脅威です。
この映画では「オム族=人間」、「ドラーグ族=人間以外の生命体」として私たちは考えるべきです。
人間だけが高等な生き物とは限りません。危機感を持っていくべきだと考えさせられました。
(30代女性)
世の中の文明の進歩が与える影響を風刺している
ココがポイント
世の中で起こっている技術革新や新しい知識を蓄え、世の中の価値観の変化が人々にどのような影響を与えていくのかを、この映画を通して風刺・皮肉的に表現しているように思います。
人間がペットとして飼っている動物には人間を超える知能はありません。ですが人工知能のようなものはシンギュラリティを迎え人間を超えることにより、玩具のように利用してきた技術によって人間の存続が危ぶまれることを危惧しているように感じます。
また人間の営みにより破壊してきた環境が人間に悪影響を及ぼすことを示唆しているように思います。
(20代その他)
"動物愛護"と"戦争"
ココがポイント
二つのメッセージ性を感じました。
第一に『動物愛護』。
これは数多くの方が映画の感想で挙げているのを目にしますが、虐げられるオム族がドラーグ人の「愛玩人間」として飼われて娯楽のために戦わせるシーンは闘犬や闘鶏など動物たちを戦わせる姿によく似ています。
他にもドラーグ人がガスによって虐殺を繰り広げるシーンでは、人に踏みつぶされる虫や殺処分される動物たちを連想させ、「動物への人間たちの蛮行」が直接的な解釈です。
第二は『戦争』です。
これはより本作をより深く考察すると、ドラーグ人とオム族の戦いは世界の戦争を縮図にしたようで「侵略や虐殺、奴隷、進化、そして戦争」と二種間の争いを描いた作品でもあると思います。
映画の始まりは、オム族の女性が殺害され赤ん坊だけが生き残るシーン。
このシーンは虐殺により孤児が増えた戦争下の状況に似ています。
さらに、テールの他にドラーグ人に飼われている「愛玩人間」はまるで古代ローマで見世物として互いに戦闘を強制された奴隷のように扱われ、愛玩人間はドラーグ人に紐に繋がれた状態で仲間の居場所に案内するシーンもありますが、これは戦争下の捕虜のように、敵によって、「奴隷にされる者、殺される者、能力を認められた者は厚遇で迎え入れられていた」という点では「愛玩人間」は捕虜や奴隷の投影ではないかと思います。
その後、ドラーグ人はオム族を排除すべく虐殺を始め、オム族の逆襲により戦争に発展してしまいますが、オム族を閉じ込めてガスによって殺害するシーンは「アウシュビッツ収容所」を表わしているのではないかと思います。
製作者からも第二次世界大戦中にナチス・ドイツによる戦争を描いていた説が考慮できます。
『ファンタスティック・プラネット』は監督ルネ・ラルーが精神病院にいた経験もあり、この作品を作るきっかけになったとも言われていますが、ローラン・トポール(イラストレーター)の存在も映画にとって大きく影響を与えたと考えられます。
トポールはポーランド系ユダヤ人出身で、彼の両親はワルシャワからのユダヤ人難民でした。
彼の描く世界観はブラックユーモアがたっぷりで、それは映画の中にも強く影響しており、不気味な顔や生物が多く登場します。
もし、ユダヤ人難民の両親の経験やユダヤ人としてナチス政権や戦争に強く関心を抱いていたら、より『戦争』について描かれたのではないかと考察できます。
(20代女性)
違う人種や動物と共存していくことの難しさを表現
ココがポイント
争うことなく、違う人種や動物と共存していくということが、いかに難しいかということを伝えたかったのかなと思いました。
人間がドラーグ人によってペットのように扱われていたのに、人間が知識を得たことによって逆転していく様子を見てそのように感じたんです。
支配しようとする争いからは、何も生まれないということも分かった気がします。
最後になって、和平条約という形が見えてきたので、やはり争わないためには、互いに頭を使うことも大事だと気付かされました。
(30代女性)
力を持たない者でも結束して立ち向かえば大きな力を持つものに打ち勝つことができる
ココがポイント
この物語では「力を持たない者でも結束して立ち向かえば大きな力を持つものに打ち勝つことができる」ということを伝えたかったのではないかと思いました。
小さな人型のオム族は、ドラーグ族という巨人に虐げられていましたが、オム族が結束してドラーグ族に立ち向かい、最終的に共存しようとドラーグ族の方から言われることになったからです。
また、ドラーグ族が、ゴキブリホイホイのようなものを使いオム族を殺害していくシーンを見て、「ゴキブリも進化の過程で知恵をつければ人もいつかゴキブリにやられる時が来る」という事も同時に伝えたかったのではないかと思いました。
(30代女性)
人間が行っている動物虐待、戦争に疑問を持ち問題提起している
ココがポイント
巨人であるドラーグ族と人間のような容姿を持つオム族を通じて、人間が行っている動物虐待、戦争などに疑問と問題提起を投げかけています。
劇中では、オム族のテールがドラーグ族のティバからペットとして扱われ、ドラーグ族は毒ガスを使ったオム族の大量虐殺を行いました。
ドラーグ族は見た目は大きな宇宙人ですが、人間のようにペットを優しく扱う時があったと思えば、虫けらのように残酷にオム族を殺す時もあり、まるで私たち人間のようだと思ったからです。
(40代女性)
映画『ファンタスティック・プラネット』で印象に残ったシーンは?何が面白いのかを解説
映画『ファンタスティック・プラネット』で最も印象に残っているシーンと、どういった点が面白かったのかを教えていただきました。
物語の主人公であるテールがペットとして飼われる場面
ココがポイント
どのシーンも印象的ではありますが、一番印象に残ったのはやはり物語の主人公であるテールがペットとして飼われる場面です。
人間が犬や猫を飼うのと同じように、ドラーグ族は人間を飼う為、テールに首輪をつけます。
その構造がとても皮肉めいており、その後飼い主となった娘も幼い頃は仲良く過していたものの、成長するにつれて遊ばなくなる流れも、人間としての存在ではなく、あくまでペットとしての立ち位置であり、ドラーグ族の倫理観の基礎になっている事実を示しています。
(30代女性)
オム族の母子がドラーグ族に襲われるシーン
ココがポイント
冒頭のほうの、オム族の母子がドラーグ族に襲われるシーンです。
私たちにとって、純真無垢な赤ん坊や、赤ん坊を育て守る母は「平和の象徴」です。
もちろん、全ての人々が争いごとをせずに生きることも「平和の象徴」ですが、母子が健やかに生きることは「生命の尊さ」や「繁殖」を意味します。
ですから、オム族の母子が襲われ、しかも母親だけが死するということは、これからこの物語の中で争いが起きるという不吉な暗示のように思えました。
(30代女性)
オム族をつついたり、虐げている場面が印象的
ココがポイント
最初の人間がオム族をつついたり、虐げている場面が特に印象的でした。
理由としては、子供の頃に私たちも虫や動物とこのようにして戯れていたことがあるからです。
この映画を通して人間・オム族を自身のように捉えて観てしまったため、思わず感情移入してしまいます。
何気なく自分が今ままでしてきていることを、客観的に観たり、実際に経験しなければ相手の気持ちや状況を理解できないと考えさせられるシーンだと思います。
これからどのように行動していくべきか改心させられるきっかけになります。
(20代その他)
オム族のテールがドラーグ人の少女・ティバと仲良く過ごすシーン
ココがポイント
印象に残っているのはオム族のテールがドラーグ人の少女・ティバと仲良く過ごすシーンです。
本作はオム族とドラーグ人の争いや虐殺のシーンが多いですが、二人が異種間でも子供同士仲良く遊び共に知識を学ぶ姿は微笑ましくもあります。
ティバの父・シンは二人が共に過ごすことを快く思ってはいませんが、オム族虐殺にはあまり前向きではない保守的な立場もあり、ティバはオム族(テール)に対して差別意識もなく心からテールとの時間を楽しんでいたと思うと、偽善的ではあると思いますが幸せを感じられた時だったと思います。
(20代女性)
ドラーグ人の瞑想の様子が音楽と併せて印象的
ココがポイント
1番印象に残っているのは、ドラーグ人の瞑想の様子です。
黒目が無くなり、意識が飛んでいく様子がなんとも異様でビックリしました。
たまたま逃げたテールがその瞑想を目撃するのですが、その時の様子も怖かったです。
体が変幻自在に変わっていって、とっても奇妙でした。
音楽もそれに合わせた奇妙さがあって、すごく印象に残っています。
ドラーグ人にとっては、瞑想は1日のすごく大事な習慣なので、この映画のキーポイントにもなっていたように思います。
(30代女性)
オム族が毒ガスのようなものを撒き散らしながら次々とオム族を殺害していくシーン
ココがポイント
ドラーグ族はオム族の知力の高さを懸念していて大量殺戮を考えていました。
そしてそれが実行されたシーンがあったのですが、オム族をペットのように操り、そのオム族が毒ガスのようなものを撒き散らしながら次々とオム族を殺害していくシーンが最も印象に残っています。
まるでゴキブリや蚊を殺すような感じで次々とオム族が殺されていきました。
しかもそれをペットとして操っているオム族にやらせているという部分が更に残酷さを助長させていると感じました。
(30代女性)
何かを暗示しているようなラストシーンが印象的
ココがポイント
オム族は廃墟の村で、ロケットの製造と操縦方法を探し出すことに成功し、別の惑星にそのロケットを持っていきます。
その惑星には巨大な首なしの人間の体の彫刻があり、その彫刻を破壊することでドラーグ人はパニックになりました。
そこでオム族とドラーグ族は和平交渉を結び、ドラーグ族は地球と呼ばれる人工の衛星を作ったというところで、映画は終了します。
今私たちが住んでいる地球は、まさにドラーグ族によって作られたものだと暗に意味しているようなエンディングでした。
(40代女性)
『ファンタスティック・プラネット』に似ている映画作品は?
カルト的な人気を誇る映画『ファンタスティック・プラネット』ですが、似ている映画やドラマ・アニメ作品はあるのでしょうか?
本編をご覧になった方々に、『ファンタスティック・プラネット』と似ていると思った他作品とその理由について教えていただきました。
『アバター』
ココがポイント
『アバター』です。
『ファンタスティック・プラネット』にてオム族を人間として例えるのなら、人間と人間以外の生物の関係という観点において、この2つの映画は似通った部分を持っていると思います。
人間界以外の非日常的な環境下で人間でもない、ナヴィでもない戦士として戦う主人公のたくましい雄姿は、まるで私たち人間と自然の争いのようにも感じます。
「人間とは強いのか?」、「自然と共生する術はないのか?」そんなテーマへの理解を深めたい方は見るべき作品です。
(30代女性)
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『ターミネーター』
ココがポイント
ファンタスティック・プラネットが好きな人にオススメしたいた作品は同じSF作品の『ターミネーター』です。
この作品は1973年に作られた作品で切り絵やフランス、チェコ文化が際立つ内容ですが、ターミネーターは全世界でも有名で、また未来で起こりうることを実写化している作品だからです。
まるでこの内容を内容を少し変えて実写化したように思えるので、さらに内容が理解しやすいと思います。
人間対人間を超える技術、生物の闘い、またその中でどのように共存し、互いに存在できるようにしていくのか考えさせられるきっかけになると思います。
(20代その他)
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『パーフェクトブルー』
ココがポイント
『ファンタスティック・プラネット』が好きな人におすすめしたい作品は、『パーフェクトブルー』今敏監督による1997年の日本のアニメ映画です。
アイドルグループを脱退した主人公・霧越未麻は女優に転身し、新たな一歩を踏み出します。
しかし、仕事内容はヌードや際どいことばかりで自分を見失いつつも未麻の仕事は軌道に乗り始めます。
そんな中、偶然見つけた未麻は未麻になりすました何者かが開設するウェブサイトを発見し、ストーカーに監視されていたことを知り、さらには未麻の周りで殺人事件が多発し精神的に追い詰められていきます。
自分自身も誰も信じられない不安定な精神が「ファンタスティック・プラネット」のようなシュルレアリスム的(シュール)で、夢と現実がわからなくなる不気味さと精神を追い詰められる緊迫感に惹き込まれる作品です。
(20代女性)
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『メトロポリス』
ココがポイント
オススメは1926年にドイツで制作された『メトロポリス』です。
ディストピアという未来都市を描いたSF映画なのですが、戦前とは思えないクオリティーなので、見る価値があると思います。
サイレント映画で、映像がとにかくすごいので終始魅了されるはずです。
アンドロイドの話にも繋がってくるのですが、人類の搾取構造が見えてきたりと、社会に訴えかけるシーンも多いように思います。
ファンタスティック・プラネットとも世界観が少し似ている気がするので、オススメです。
(30代女性)
『進撃の巨人』
ココがポイント
「巨人と人との戦い」という点においてよく似ているので『進撃の巨人』をお勧めします。
壁の中で暮らす人類が、ある日壁の外にいる巨人に攻め込まれて大量に殺されるところから始まります。
ドラーグ族とオム族のように、巨人と人類は圧倒的な力の差があり、人類は無惨に殺害されていきます。
しかし、勇敢な人類が巨人に立ち向かい巨人を倒していくシーンは圧巻です。
一方、敵は巨人だけではなく人類の中にもまた敵がいて、人類同士の争いもあります。人類同士の争いもまた見どころの一つです。
(30代女性)
『王と鳥』
ココがポイント
暴君である王とそれに対抗する鳥の話です。
最後には鳥が勝利して、人々は自由になったはずですが、最後はハッピーエンドで終わらないシュールさがあります。
私たちが信じている正義は、本当は正義でなく悪であるかもしれない、光の裏には必ず影があるということを映画の節々に感じる作品です。
この映画の世界は現実でも起こりえるな…、と考えながら観ていると少し怖くなった感覚が『ファンタスティック・プラネット』を見たときの感覚に似ていました。
(40代女性)
まとめ
映画『ファンタスティック・プラネット』の
- 映画の考察&解説
- 似ている作品
についてのご紹介でした。
納得のいく考察や解釈は見つかりましたか?
観る度に新たな発見もできる一作ですので、こちらに寄せられた解釈で新たな視点を発見できましたら幸いです!
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※本ページの情報は2023年11月時点のものです。最新の情報は各公式サイトにてご確認ください。