サイレント映画からトーキー映画へ…激動のハリウッドを舞台に夢を追う男女が描かれる、エンターテインメントドラマ。映画『バビロン』。
こちらの記事では
『バビロン』の
- 映画の考察&解説
- 印象に残っているシーン
- この映画が好きな人におすすめの映画
について映画ファンの方に答えていただきました。
※映画本編の内容に言及しておりますので、未視聴の方はお気を付けください。
ぜひ『バビロン』と一緒にチェックしてみて下さいね。
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目次
ジャック・コンラッドが自殺した理由は?
映画『バビロン』ストーリーの終盤では、ブラッド・ピット演じる映画界のスター、ジャック・コンラッドが拳銃自殺を図りますが、彼はなぜ自殺を選んだのでしょうか。
コンラッドが自ら死を選んだ理由を考察していただきました。
時代の変化に伴う自らの立ち位置を実感したため
ココがポイント
コンラッドはハリウッドの黄金時代を生き、スターとしてスポットライトを浴び続けてきました。
富も名声も欲しいものすべてを手にし、この時代が続くものと思っていましたが映画はサイレントからトーキーへと移行しており、徐々に時代から取り残されていくことになります。
オファーが来た最新作の現場でコンラッドはサイレント映画を作っていた時代との変化や、自分の立ち位置の変化を実感します。
この現実を受け止めるとともに、そこに生きる理由はないと思い自殺を図ったと思われます。
スターとして生き、映画界で生きることが自分の人生と考えるコンラッドにとって、駄作に出演することや観客に笑われることは死ぬこと同意だったのではないでしょうか。
あまりにも激しい時代を生きたスター、コンラッドの悲しくも切ない決断だったように思います。
様々な"キッカケ"が重なりコンラッドを自殺に至らせた
ココがポイント
今までのコンラッドは自分が一番だと思って自信を持ってやって来たし、確かにそれは真実だったけれども、現在の世間からの評判は意に反せず地に落ちてしまっていて、注目が自分にないことを肌で感じてはいるものの、彼の高いプライドがそれを許せず、認めたくない強い気持ちが自分自身を苦しめ苛立たせていました。
更に旧知の女性ジャーナリストがコンラッドの記事を辛らつに書いていて、その事で話し合いに行ったものの、彼女の歯に衣を着せない真実の話を聞かされたこともキッカケの一つだったと思います。
彼女は時代の大きな変化を理解し、過去・現在そして未来へと続いて行く映画の世界をとうとうと流れていく大河として語った事が、逆にコンラッド自身はその中のほんの小さな小石のように感じさせてしまった気がします。
少しずつ衰えていくのは惨めなことだと思ったから
ココがポイント
ジャック・コンラッドは自分が緩やかに落ち目になっていることを感じていて、どん底まで落ちる前に終わらせようと考えたのだと感じました。
キャリアは衰退してはいたものの、そこまでひどい状態ではなかったと思います。声をかける昔馴染みの関係者もまだまだ多く、下火ではあるもののキャリアは決して終わってはいないように感じました。
しかしコンラッド本人は、少しずつ衰えていくのは惨めなことだと心のどこかで感じていたのだと思います。
思いつめた様子ではなく、緩やかに描かれていたように、ちょっと思い立っての行動だと感じました。
「この辺が潮時かもしれない」「輝きをなくす前にそろそろ終わりにしておこう」ということを思いついたのではないかと思います。
もともと衝動的な部分もある人物に見えていたため、「思い立ったら即行動」のコンラッドらしさを感じる最期でした。
ネリーがマニーの前から姿を消した理由は?
物語の終盤、マーゴット・ロビー演じるネリーと、ディエゴ・カルバ演じるマニーは、マフィアに命を狙われながらも互いの愛を確かめ合い、結婚を約束します。
しかし車での移動中、マニーが車を離れた隙にネリーが一人車を降り暗闇へと消えて行ってしまいます。
彼女はなぜマニーの前から姿を消したのかを考察していただきました。
愛する人に迷惑をかけることはできないという思いから離れることを決めた
ココがポイント
ネリーは消える直前、マニーと愛を誓い合い束の間の幸せを感じていました。
想像するに過酷な環境で育ったネリーにとって唯一心を許し、いつでも味方でいてくれるマニーと愛を確かめ合えたことは、安心でしかなかったはずです。
その一方で、薬やギャンブルへの依存、破天荒さは変えることができず、実際ギャンブルで高額な借金を作りマニーと逃亡する途中でした。
今後マニーと一緒になったところで幸せにはなれないことを悟っていたのかもしれません。
また、マニーの思い描く理想の女優にはなれない現実や、スターとしての栄光をもう手に入れられないことも理解していたはずです。
そしてマニーという真に愛する存在ができたからこそ、その愛する人に迷惑をかけることはできないという思いから離れることを決めたのだと思います。
弱った動物が静かに姿を消すように、ネリーもまた死期を悟って去った
ココがポイント
ネリーが借金でにっちもさっちも行かなくなって、マニーに助けられて2人で逃避行していく道中で、それを全く気にしていない感じでいつものようにふざけて陽気な様子なのは、逆に心の中は真反対の様な気がしてなりませんでした。
それは、今までも周りと衝突しても気丈に、そして強気にふるまって来ていた彼女が、陰で1人悔し涙を流したりしていた様子からも推察されます。
もうこの時は自分の人生に諦めてしまっている感じがヒシヒシと伝わってきます。
この時にネリーがマニーからプロポーズをされ、もうその言葉をもらえただけで十分心が満たされた感じも伝わって来ます。
彼女はマニーを巻き込む事だけはしたくなくって、弱った動物が静かに姿を消すように、ネリーもまた死期を悟って去って行ったのだと思いました。
マニーに醜態を見せ続けることが耐えられなかった
ココがポイント
ネリーは自分がマニーを振り回し、巻き込んでいることを自覚していました。
ずっとマニーに対する罪悪感を感じていたと思います。
しかしマニーなら助けてくれるという信頼があり、マニーも見捨てることができずに無茶なことをしてでもネリーを助け続けていました。
しかしネリーは、かつて自分の夢に共感し憧れてくれたマニーに醜態を見せ続けることが耐えられなかったのだと思います。
「助かりたい、死にたくない」という気持ちに「これ以上マニーを自分に付き合わせて無様な姿を見られたくない」という気持ちが勝った結果、ネリーは消えることを選んだのだと思いました。
また、逃げ続けるよりも自分らしく自由気ままに終わりを迎えようという気持ちもあったのではないかと思います。
ネリーの死因はなんだったのか?
マニーの前から姿を消したネリーは、後に新聞の片隅に死亡記事が掲載されます。
彼女の死因はどういったものだったのかを考察していただきました。
生きていく意味を持てず自殺をしたと推察
ココがポイント
おそらくネリーは自殺したのではないかと考えます。
マニーという信頼できる人と離れ、映画に出てスターであり続けるということもできず、あらゆるものを諦めて自分を保つことが難しくなっていたと思います。
薬やギャンブル漬けになっていたのも、現実を直視することができず心が病んでいたからではないでしょうか。
家族に関してもお母さんは施設に入っており、ネリーのことが分からない状況。
お父さんに対しては特に愛情を持っていないように思えました。
ネリーは故郷を捨て、大切な人を持たず女優になるという夢だけを胸に人生を駆け抜けました。
最後にマニーへの愛に気付きますが、自分と一緒にいると幸せになれないと思い離れます。
真に孤独になってしまったネリーは、生きていく意味を持てず自殺をしたのではないかと思います。
マニーを危機から遠ざけた…?ネリーの死因は3パターン考えられる
ココがポイント
ネリーとマニー2人が相思相愛になれた事は喜ばしい事ですが、そのほんのひと時の幸せを選んでネリーがずーっとマニーと一緒になって逃避行を続けて行っていたとしたら、きっとどこに行ってもギャングの追手が執拗に迫って来て人生が台無しになっていたと推察します。
それはマニーがギャングに襲われた事から、もうネリーにもその魔の手が迫っていたのは明白で、マニーから1人離れて行ったのも、自分が撃たれる事でネリーの危機を遠ざけようとしたのかもと思っています。
しかし最後の新聞発表では、遺体で発見としかこちらには分からないので、マニーと別れた直後にギャングに見つかって射殺されたのが濃厚ですが、逃げられたとしても薬物中毒で亡くなったか、先を考えられなく自殺をしたのか、この3つのうちのどれかだと考えます。
やはりネリーは追っ手に捕まり殺されたのでは
ココがポイント
捻りのない考察かもしれませんが、やはりネリーは追っ手に捕まり殺されたのだと思います。
もともと追われていたし、裏社会の人間から逃げ切るのは難しいことです。マニーと一緒でも逃げ切るのは一筋縄ではいかなそうでした。
ひとりになったことにより、生き延びるのはさらに絶望的になったと感じました。
ただ、裏社会の手にかかったのであれば惨殺のような状態になっている可能性が高く、それであればもっと大きな記事だったのではないかとも思います。
もともと薬に興じていたため、薬のオーバードーズの可能性もあります。また、毒蛇に噛まれて死にかけていたシーンもあったため、最後も毒蛇に噛まれていてもドラマチックでネリーらしいかもしれません。
映画『バビロン』ラストシーンの考察
映画『バビロン』のラストシーンで、ディエゴ・カルバ演じるマニーが映画館で涙を流しますが、どういった感情によるものだったのでしょうか。
また、劇場で数々の名作映画のモンタージュが流れますが、どういった意図があったのかを考察していただきました。
蓋をしていた映画への夢や出会いを慈しんだシーンだった
ココがポイント
マニーはロサンゼルスから離れ自分の家庭を持ち、かつて自分の胸を熱くした映画とは距離を作って生活していたのではないかと考えられます。
しかしかつて訪れた映画館で映画を見て、サイレントからトーキーへの移行の映像を見た際、すべての記憶が戻ってきます。
映画には夢があり、そこに自分が関わっていたことやネリーやコンラッドとの出会い。
激動の記憶に蓋をしていきていましたがすべてが解放され、それを慈しむ思いで涙を流していたように思います。
モンタージュが流れることで、作品ではハリウッドの派手すぎる栄華を揶揄しているシーンも多くありますが、最後には映画の持つ力や世代を超えて人々に夢を与え続けていることに敬意を表しているように思いました。
時を経て落ち着いてそれらを振り返る事で感無量となった
ココがポイント
自身が無声映画からトーキー映画へと移り変わって行く激動期に、その世界にどっぷりと関わり過ごしてきた経験を踏まえ、今それを客観的にスクリーンで観る事でとても感慨深いものを感じているのだと思います。
それは自身の事だけでなく、無声映画の時代に生きた、枠にとらわれない人達の色濃い人生模様も観て触れて来ていて、スターに上り詰めた俳優たちの栄華がトーキー映画の隆盛で、彼らに暗い影を落とすのも間近に観てきて、今までの出来事が走馬灯の様に浮かんできたのでしょう。
そこにはスター・コンラッドとの事、はちゃめちゃだけど頑張っていた愛するネリーの事、撮影のスタッフとしての現場の変化も含めて、時を経て今落ち着いてそれらを振り返る事で感無量となったのだと思います。
あのラストシーンはチャゼル監督からの映画史へのリスペクトが現れたもの
ココがポイント
マニーは苦労という言葉では言い表しきれないほどの経験をして、あのラストシーンを迎えました。
自分を引っぱり、かつては共に戦ったネリーやコンラッドもいなくなってしまいました。
感傷や懐古といったさまざまな感情が涙となって溢れたのだと感じました。
「バビロン」はハリウッドの映画産業の黎明期を描いた作品であり、あの時代があったからこそ後にたくさんの名作ができたのたと思います。
苛烈でインモラルな時代だったけれど、その時代があったからこそ競争が起こり映画業界は発展し、すべての作品はその延長線上にあります。
あのラストシーンはチャゼル監督からの映画史へのリスペクトが現れたものであり、チャゼル監督は必ずしも報われたわけではない名もなき過去の大勢に花を持たせたいと考えたのではないでしょうか。
映画『バビロン』で印象に残っているシーン
映画『バビロン』本編で、最も印象に残っているシーンと出演者を聞いてみました。
オープニングの派手なパーティーシーンから映像の凄みを感じる
ココがポイント
印象に残っているシーンはオープニングの派手なパーティーのシーンです。
すべての人の動きがカオスなようで計算し尽くされており、"本能の解放"が上手く表現されていると感じるからです。
危うさのある派手さにハラハラしながらも現実逃避のパーティーを観客も同時に味わえる映像の凄みを感じます。
マニーがネリーに恋する瞬間もとても美しく表現されていると感じました。
印象に残っている出演者はマーゴット・ロビー演じるネリーです。
とにかく身体表現や表情が豊かで、彼女しかネリーを演じられなかったのでは、と思わせる圧巻の演技でした。
ネリーは自分が味わった逆境を女優という仕事に反映することで生き、生かされたのだなと思います。彼女の子供のような奔放さに魅了されました。
ジャズ奏者のシドニー・パーマーの吹くトランペットのシーン
ココがポイント
ジャズ・ランペット奏者のシドニー・パーマーの吹くトランペットのシーンが一番印象に残っています。
プロなので当たり前なのですが、その音程の確かさと音色の素晴らしさが際立っていて、映画の中で流れると真剣に聴き入ってしまっていました。
その彼も映画界に見い出されると、立派な家と車をあてがわれ素晴らしい待遇となっていくのはサクセスストーリーを観ているようで楽しかったです。
でも、黒人ながらも更に肌の色を黒い粉を使って濃くするように指示されるシーンは、どんなに屈辱的だったろうと悲しく感じてしまいました。
しかし最後には自分らしい場所に落ち着くシーンも見れ、お金ではなく自分を大切にした結果なのがほっとさせられました。
レディ・フェイの男装での登場シーンに心を奪われる
ココがポイント
個人的に1番印象に残ったシーンは、序盤のレディ・フェイ(リー・ジュン・リー)の登場シーンです。
まず男装で現れるアップのカットに心を奪われました。
クールでかっこよくて、静かな間の後、しっとりと曲に入るという一連の流れは隙が無く完璧でした。
作中の女性たちも色めき立っていましたが、スクリーン越しでもドキドキしてしまうほどでした。
色気のある歌詞を上品かつ色気たっぷりに歌い上げ、狙った女性を撃ち落としていたレディ・フェイが作中で1番かっこよかったような気もします。
ネリーのような派手な女性がたくさん出てくる作品において、アジア系の女性は異色でしたが、当時のハリウッド業界でも異色でかえって目立つ存在だったのではないかと思います。
そんなレディ・フェイが場を一瞬で支配し、会場中が彼女の虜になっている、というのがたまらなくかっこよかったです。独特の存在感が大好きで、また見たくなるシーンでした。
映画『バビロン』が好きな人におすすめの映画
映画『バビロン』が好きな人におすすめの映画作品を教えていただきました。次に観る映画選びの参考にしてみてくださいね。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
ココがポイント
この映画は1980年代のウォール街を舞台にした作品で、証券マンのジョーダン・ベルフォートが億万長者に成り上がっていく物語です。
とにかく、富を築くまでが破天荒で現実離れしている点や、主人公ジョーダンのキャラクターの強さ、富を築き金、ドラッグ、女に溺れ、そのあとの転落していくまでが『バビロン』の派手さと似ています。
『バビロン』のような人間が栄華と地獄を味わうストーリーがお好きな方におすすめです。
主人公ジョーダンの人の心をつかんで離さないキャラクターや、頂点に立ち、そこから落ちていく様が爽快に描かれております。
『バビロン』は実際のハリウッドを舞台にしている作品だと思いますが『ウルフ・オブ・ウォールストリート』も実話を元にしており、そのリアルさゆえの面白さがあるのかもしれません。
『ドリーム』
ココがポイント
アメリカの歴史を知りたい方に『ドリーム』をオススメ致します。
『バビロン』はアメリカの映画界のトーキー映画へと移り変わって行く歴史と、その中にあって喜怒哀楽の人生を送る人たちのストーリーを伝えてくれましたが、『ドリーム』はアメリカ航空宇宙局(NASA)の人類初の有人宇宙飛行へと進んで行った技術者たちの努力と歴史を通して、当時の人々の苦悩と喜びを垣間見る事が出来ます。
特に『ドリーム』の方は職場内においても人種差別に苦しむ黒人女性3人の様子が強く表現されているのが特徴です。
どんなに能力が高くてもそれを認めてくれず、事あるごとに差別を受けるものの、粘り強く知恵と努力で立ち向かい、次第に主戦力となって行く姿を見せてくれます。
『ナイトメア・アリー』
ココがポイント
おすすめしたい映画はいろいろありますが、私個人としてはギレルモ・デル・トロ監督の『ナイトメア・アリー』をおすすめしたいと思います。
この作品は映画業界ではないものの、見世物小屋やマジックといったショービジネスの世界が舞台となっています。
表舞台の煌びやかさと舞台裏の闇、ショービジネス界での栄枯盛衰などをたっぷり見ることができます。
バビロンの豪華さや毒々しさに惹かれた方にはハマる作品ではないかと感じます。
また、ブラッドリー・クーパーやケイト・ブランシェットといった豪華なキャストもこの作品の魅力のひとつです。
ルックスにも華があり、演技にも説得力のあるこの2人の駆け引きのシーンは非常に見ごたえがあります。
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まとめ
『バビロン』の
- 映画の考察&解説
- 印象に残っているシーン
- この映画が好きな人におすすめの映画
についての解説と考察でした。
新たな視点や納得のいく考察はありましたか?
ぜひ『バビロン』と一緒にチェックしてみて下さいね。
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※本ページの情報は2023年11月時点のものです。